明日には忘れるなにかについて

天野くにひろのブログです

シーバスリーガルを切らした日

バイト中、近所の同業のお客から突然問われた。

 

「この仕事は君にとって楽しいかい?」

 

「はい、楽しいですよ。分からないことは多いですが、ここでは何かあればだいたい助けてもらえますから。」

 

いきなりの質問の驚いてしまったが、なんとか返答した。

 

「そうかい。この職業において、楽しいという感覚は一番大事だからね。頑張るんだよ。」

 

このお客はすぐ近所でご自身で店を経営している。この道で長く、名の知れている方だ。

 

「シーバスくれないか?」

 

「申し訳ありません、切らしてまして。あちらのビンは飾り用のダミーなんです。」

 

「あはは、そうか。実は、なんでこの店に今日来ようと思ったのか分からないんだ」

 

俺にまで一杯奢ってくださった。いい人である。

 

 

その日アフター、別のお客とポツポツと会話と食事をしながら、内心ずっと考えていた。俺はこの仕事が本当に楽しいのか。

 

心身を壊して急遽退職し、定職に着くのが難しくなった時、調子が悪ければ当日欠勤をしてもよいが給料は完全なる出来高制、その条件で拾ってくれたのが今の職場だ。寛容な条件を提示してもらえたと、その心に感謝している。

 

しかし業務内容が楽しいのかと言われたら、少し怪しいような気がしてきた。俺は拾ってもらえたという感謝の心とその日の出来高を良くするためだけに動いているのであって、別に水商売を楽しんでいるのではないような気がするのである。

 

俺の心が彼に見透かされていたのかもしれないと思うと、なんだか食事の味が一気にしなくなったような気がした。